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◆野菊の如き君なりき (2007/September)
この標題は、伊藤左千夫の名作「野菊の墓」を映画化した際の作品名だ。
今回は野菊を取りあげようと思う。
一口に野菊と云っても、植物学的にはいくつもの属に分類される。
以下は代表的な種類だ。
Aster(紫苑)属* -
野紺菊や嫁菜を代表とする主に青紫花が咲くグループ
Kalimeris(嫁菜)属 - 嫁菜を代表とする主に青紫花を咲かせるグループ
Chrysanthemum(菊)属* -
竜脳菊や浜菊を代表とする主に白花/黄花を咲くグループ
Dendranthema(磯菊)属 - 磯菊を代表とする主に黄花を咲かせるグループ
Erigeron(昔蓬)属 -
姫女苑や春紫苑を代表とする主に淡桃白花を咲かせるグループ
さて、野菊の墓で語られる野菊が一体何の花であるか、
具体的には野紺菊であるのか、嫁菜であるのか、長年論じられている。
野紺菊と嫁菜は共によく似た花を咲かせ、草姿も生育環境もほぼ一緒である。
もちろん見分ける手立てはあるのだが、パッと見、花だけで区別はむずかしい。
で、あなたはどちらだと思うの?と問われたら、非常に微妙ではあるのだが、
全くの私見で、僕は次の理由から嫁菜説を採るだろうか。
1.「野菊の墓」の舞台が下総(現千葉県)の松戸近在であり、
田んぼの情景が登場することから、
あぜ道を好む嫁菜が普通に生える土地柄だと考えられる。
野紺菊は同じような環境でも、土手などのやや乾いた場所を好む。
2.嫁菜は春の若葉を食することができるが、野紺菊は食用には難しい。
3.作品中で政夫が竜胆に、民子は野菊に例えられるくだりがあるが、
竜胆が紫紺であることから、野菊は同系の濃紫色ではなく、淡色系である気がする。
その方が花を組み合せたときにお互いの花色を引き立てあい、
竜胆に例えた政夫の男性としての力強さを強調できるからだ。
それ故に、時に濃色系の花咲く野紺菊よりも、淡色だけの嫁菜と考える。
みなさんはどのように思われるだろうか?
ところで嫁菜は上述の通り、春に若葉が食べられることから名づいたが、
解釈を誤ったWebサイトが在るのが残念だ。
「あまりに美味しいので嫁に食べさせるのがもったいないから」と書かれているが、
そうではないと思う。
それは、『秋茄子は嫁に食わすな』を
「嫁に食べさせるのが惜しいほど美味だから」と
解するのと同じ間違いのような気がする。
この本来の意味が、
『秋茄子は体を冷やすので、(赤ん坊を産む)嫁に与えてはいけない』なのと同様に
かつては一人でも多い方が労働力が増す時代であったからこそ、
大事な赤ん坊を産んでくれる嫁に精をつけさせる為の菜、の意味ではないかと思われる。
それを裏付けるように嫁菜はビタミンAやCを多含し、加えてカルシウムやリンも多い。
*最近の学名再評価に従い、
Kalimeris(嫁菜)属、Miyamayomena(深山嫁菜)属はAster(紫苑)属に統合
Dendranthema(磯菊)属はChrysanthemum属に統合、加えてChrysanthemum属には
Nipponanthemum(浜菊)属やLeucanthemella(御輿菊)属を含めた
(上段:野紺菊、谷川紺菊)
(中段:白嫁菜、嫁菜、柚香菊、田舎菊(山城菊))
(下段:孔雀アスター、亜米利加菊、源平小菊 ; いづれも外国産種)
※Plants-sheet.comでコチラを掲載しています
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紫苑 |
(Aster tataricus) |
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野紺菊 |
(Aster ageratoides ssp.microcephalus var. ovatus) |
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千本菊(御簾菊) |
(Aster microcephalus) |
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白嫁菜 |
(Aster ageratoides ssp. leiophyllus) |
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田舎菊(山城菊) |
(Aster ageratoides var.
semiamplexicaulis) |
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嫁菜、大柚香菊 |
(KalimerisAster
yomena) |
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亜米利加菊 |
(Boltonia asteroides) |
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源平小菊 |
(Erigeron karvinskianus) |
(2007/11/ 1改訂)
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