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~ 四季を感じて ~



野菊の如き君なりき (2007/September)

 

   この標題は、伊藤左千夫の名作「野菊の墓」を映画化した際の作品名だ。

  今回は野菊を取りあげようと思う。

 

  一口に野菊と云っても、植物学的にはいくつもの属に分類される。

  以下は代表的な種類だ。

 

   Aster(紫苑)属* - 野紺菊や嫁菜を代表とする主に青紫花が咲くグループ

   Kalimeris(嫁菜)属 - 嫁菜を代表とする主に青紫花を咲かせるグループ

   Chrysanthemum(菊)属* - 竜脳菊や浜菊を代表とする主に白花/黄花を咲くグループ

   Dendranthema(磯菊)属 - 磯菊を代表とする主に黄花を咲かせるグループ

   Erigeron(昔蓬)属 - 姫女苑や春紫苑を代表とする主に淡桃白花を咲かせるグループ

 

  さて、野菊の墓で語られる野菊が一体何の花であるか、

  具体的には野紺菊であるのか、嫁菜であるのか、長年論じられている。

 

  野紺菊と嫁菜は共によく似た花を咲かせ、草姿も生育環境もほぼ一緒である。

  もちろん見分ける手立てはあるのだが、パッと見、花だけで区別はむずかしい。

  で、あなたはどちらだと思うの?と問われたら、非常に微妙ではあるのだが、

  全くの私見で、僕は次の理由から嫁菜説を採るだろうか。

 

  1.「野菊の墓」の舞台が下総(現千葉県)の松戸近在であり、

    田んぼの情景が登場することから、

    あぜ道を好む嫁菜が普通に生える土地柄だと考えられる。

    野紺菊は同じような環境でも、土手などのやや乾いた場所を好む。

 

  2.嫁菜は春の若葉を食することができるが、野紺菊は食用には難しい。

 

  3.作品中で政夫が竜胆に、民子は野菊に例えられるくだりがあるが、

    竜胆が紫紺であることから、野菊は同系の濃紫色ではなく、淡色系である気がする。

    その方が花を組み合せたときにお互いの花色を引き立てあい、

    竜胆に例えた政夫の男性としての力強さを強調できるからだ。

    それ故に、時に濃色系の花咲く野紺菊よりも、淡色だけの嫁菜と考える。

 

  みなさんはどのように思われるだろうか?

 

  ところで嫁菜は上述の通り、春に若葉が食べられることから名づいたが、

  解釈を誤ったWebサイトが在るのが残念だ。

  「あまりに美味しいので嫁に食べさせるのがもったいないから」と書かれているが、

  そうではないと思う。

  それは、『秋茄子は嫁に食わすな』を 「嫁に食べさせるのが惜しいほど美味だから」と

  解するのと同じ間違いのような気がする。

  この本来の意味が、

  『秋茄子は体を冷やすので、(赤ん坊を産む)嫁に与えてはいけない』なのと同様に

  かつては一人でも多い方が労働力が増す時代であったからこそ、

  大事な赤ん坊を産んでくれる嫁に精をつけさせる為の菜、の意味ではないかと思われる。

  それを裏付けるように嫁菜はビタミンAやCを多含し、加えてカルシウムやリンも多い。

 

  *最近の学名再評価に従い、

   Kalimeris(嫁菜)属、Miyamayomena(深山嫁菜)属はAster(紫苑)属に統合

   Dendranthema(磯菊)属はChrysanthemum属に統合、加えてChrysanthemum属には

   Nipponanthemum(浜菊)属やLeucanthemella(御輿菊)属を含めた

 

 

 

白花野紺菊

谷川紺菊

 

白嫁菜

嫁菜

柚香菊

田舎菊(山城菊)

 

孔雀アスター  ボルトニア(亜米利加菊)  源平小菊

  (上段:野紺菊、谷川紺菊)

  (中段:白嫁菜、嫁菜、柚香菊、田舎菊(山城菊))

  (下段:孔雀アスター、亜米利加菊、源平小菊 ; いづれも外国産種)

 

 

  ※Plants-sheet.comでコチラを掲載しています

  紫苑 (Aster tataricus)
  野紺菊 (Aster ageratoides ssp.microcephalus var. ovatus)
  千本菊(御簾菊) (Aster microcephalus)
  白嫁菜 (Aster ageratoides ssp. leiophyllus)
  田舎菊(山城菊) (Aster ageratoides var. semiamplexicaulis)
  嫁菜、大柚香菊 (KalimerisAster yomena)
  亜米利加菊 (Boltonia asteroides)
  源平小菊 (Erigeron karvinskianus)

   

                                          (2007/11/ 1改訂)




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